「人を動かす」「組織を回す」「現場に落とし込む」「戦略を浸透させる」
仕事をしていると、こんな言葉をよく耳にします。私自身もつい使ってしまいます。
でも、ときどき気になります。
人って、動かすものだったっけ?
組織って、誰かが回すものだったっけ?
もちろん、どれも決して悪気があって使っているわけではありません。
ただ、言葉には、その背後にあるものの見方が表れるような気がしています。
組織について語るとき、私たちは知らず知らずのうちに、工業や軍隊のような世界を思い浮かべていることがあります。
目標を決め、計画を立て、役割を分担し、指示を出す。
一つひとつの部品が決められた通りに動けば、全体もうまく動く。
そんな考え方です。
もちろん、それが役に立つ場面もたくさんあります。安全や品質を守るために、決められた手順が必要な仕事もあります。
でも、人が集まって働く組織は、それだけでは説明できないように思います。
誰かの何気ない一言で、チームの空気が変わる。
上司が少し話を聞くようになったら、会議で意見が出るようになる。
よかれと思ってつくった制度が、思いがけない行動を生んでしまう。
人と人の間では、計画した通りにはいかないことが、日々起きています。
システム思考に触れて、私がおもしろいと感じるのは、何かがうまくいかないとき、原因を一つに決めなくてもいいということでした。
「誰が悪いのか」「何が足りないのか」
そう考える代わりに、
「どんな関係や働きかけが、この状況を生んでいるのだろう?」
と考えてみる。
例えば、部下が自分で考えて動かない、と悩んでいる上司がいたとします。
上司は心配だから、細かく指示を出す。
部下は指示があるから、自分で判断しなくなる。
それを見た上司は、ますます心配になって、さらに細かく指示を出す。
どちらも、自分なりに一生懸命やっている。
でも、そのやりとりが続くことで、抜け出しにくい状況が生まれているのかもしれません。
そう考えると、「上司のマネジメント力を高めよう」「部下の主体性を育てよう」だけでは、少し足りない気がしてきます。
二人の間で、何が起きているのか。
そこに目を向けると、別の手の打ち方が見えてくることがあります。
最近は、組織を機械ではなく、自然や生きもののように眺めてみることにも関心があります。
自然・生きものは、外から指示された通りに動くわけではありません。
周りの環境と関わりながら、変化し続けています。
組織も、そこにいる人たちの関係や、周囲とのやりとりの中で、少しずつ姿を変えているのかもしれません。
だから、何かを変えたいときに、いつも「どう動かすか」から考えなくてもいい。
「どんな関係が生まれるといいだろう?」
「どんな環境なら、自然と動きたくなるだろう?」
そんな問いから始めてみる。
とはいえ、私も仕事の中では、計画を立てるし、目標も決めるし、進捗も確認します。
機械のように考えることが、全部いけないわけではない。
ただ、組織を眺めるレンズが、それ一つしかないのは、もったいない。
そんなことを思いながら、今日も「このプロジェクト、どう回そうか!」と言っている自分がいます。思考の訓練は続きます。

